この記事では、大腿骨転子部骨折において術後の早期の荷重時痛について疼痛軽減するための工夫やリハビリの進め方、注意が必要な痛みについて考察を交えて記載します。
はじめに
大腿骨転子部骨折において骨折部の安定性を考慮し、荷重量を確認したうえで、早期離床・早期荷重を進めることが重要とされています。
疼痛を分析することやリハビリを進めるうえで骨折の重症度を知ることが重要です。
→転子部骨折ではEvans(エバンス)分類があります。
介入前のチェック事項
- 骨折の重症度(特に安定性・不安定性、小転子の離開)
- 骨粗鬆症
- Drの安静度
- 糖尿病の有無→糖尿病と整形外科疾患の関連
- 病前生活→予後予測の材料になる
- 全身状態 (せん妄、酸素、傷の状態など)→術後の注意点
症例の画像
自宅で転倒して右大腿骨転子部骨折にて 骨接合術施行(髄内釘)
症例情報
Dr情報 |
不安定型の骨折 痛みに応じて翌日より荷重許可 |
歩行時に鼠径部や大腿外側部痛あり
歩行時の疼痛に対しての考え方
- 歩行周期のどこでどの部位の疼痛がみられるか
- 骨のずれの疼痛なのか、テレスコープやカットアウトからくる疼痛か
- 筋収縮による疼痛か創部の疼痛か
- 筋収縮の疼痛であれば、求心性・遠心性収縮の疼痛か
- ROMの際の疼痛と歩行周期での疼痛が一致するか など
- 以下に今回の症例の疼痛原因を考察する。
症例の疼痛は遊脚前期に鼠径部痛・立脚中期に大腿外側部痛がみられました。
以下にそれぞれの疼痛原因の考察を示します。
歩行時の疼痛にたいして考察を説明しますまずは鼠径部痛についてです。
鼠径部痛は遊脚前期に認めました。遊脚前期としては、腸腰筋の伸張・求心性収縮が求められます。しかし、転子部の離開があり、歩行時に腸腰筋が収縮すると小転子の離開ストレスが増強し疼痛が出現する可能性や腸腰筋の筋力を補うために長内転筋や恥骨筋などの屈曲作用のある内転筋群の過緊張により鼠径部痛が生じるのではないかと考えました。
次に大腿外側部痛に対しての考察を説明します。
大腿外側部痛は立脚中期に特に疼痛がみられました。立脚中期は外転筋力や内転可動域が必要とされています。手術の際に外転筋群である中殿筋や小殿筋の侵襲、また大腿筋膜張筋につながる腸脛靭帯や隣接する外側広筋の侵襲により疼痛および筋力・伸張性が低下し歩行時痛が出現したと考えられます。また皮膚の侵襲による伸張痛もあったのではないかと考えました。
リハビリ時の工夫
患者の状態に応じて注意事項やリハビリの内容を工夫する必要があると考える。
・小転子の離開時の疼痛であれば起居時に腸腰筋が働くと疼痛が強くなる。そのことから起居時の疼痛が強い場合は疼痛が落ち着くまではしっかり介助する。
・膝伸展筋力が低下している人には、弾性包帯や装具を使用して膝伸展をサポートする。
もれなく股関節の機能が低下するため、二関節筋が強く作用し、単関節筋が使えず筋力低下や運動学習が進まない。急性期において荷重練習は、ADLの拡大のために重要。しかし、ただ歩かせるだけでは誰でもできる。一単位の中でできることを考えながらやるべきでしょう。
・荷重時痛が強い場合、免荷機器があれば使用し歩行練習を取り入れていく。
・痛みが強い場合、体重計を利用しどの程度の荷重ができるのか。経過を追う中で荷重量の増減はあるのか? この結果に応じてDrへのカンファレンスでの報告をしていく。
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