体験した症例を掲示します。治療や勉強の参考にしてください。
はじめに
・仰向けにて長時間臥床後、左下肢の動作時に左臀部から足部の後方にかけて疼痛が出現した症例を経験した。
・骨盤のアライメントに着目し修正を行ったところ症状が消失に至った。一つの症例を紹介します。
紹介
診断名
脊柱管狭窄症 坐骨神経痛
主訴
朝起きて左足を動かしたとき痛くて起きれない
動き始めて時間がたつと痛みがなくなり動けるようになる
ニード
痛みなく起き上がれるようになりたい
内服 トラマール リリカ
初回評価
初期 | |
疼痛 | 疼痛動作:長時間背臥位にて臥床した後 左下肢を動かす際に疼痛が出現 起居動作が困難 部位 :左臀部(PSIS付近)から足部の後面NRS :10 |
圧痛 | 左梨状筋 |
PLFテスト | 陽性 |
トーマステスト | 左陽性 |
ROM | 股関節伸展 右20/左15 |
背臥位でのアライメント | 骨盤 ASIS-PSIS 間 4横指前傾 |
【 理学療法プログラム 】
腹筋群の収縮による骨盤の後傾運動と腸腰筋のリラクゼーション
梨状筋のリラクゼーションや坐骨神経滑走
介入後
介入後 | |
疼痛 | 疼痛なく動作可能 NRS: 0 |
圧痛 | 消失 |
PLFテスト | 陰性 |
トーマステスト | 陰性 |
ROM | 右20/左20 |
背臥位でのアライメント | 骨盤 ASIS-PSIS 間 2横指前傾 |
考察 疼痛の発生について
- 疼痛部位
今回の症例の疼痛部位はこちらの画像に示してある仙腸関節痛や坐骨神経痛の疼痛部位と同じでした。
そのため本症例の疼痛は仙腸関節痛と坐骨神経痛を疑いました
この疼痛発生のメカニズムについて話していきます
本症例は評価結果より腸腰筋の短縮が考えられます。また疼痛は長時間背臥位をしていることにより出現しました。腸腰筋の短縮や下肢の重みにより腰椎の前弯や骨盤の前傾が生じたと考えます。
それにより仙腸関節にカウンターニューテーションの動きが起き仙腸関節にずれが生じ臀部痛が出現したと考えます。文献より仙腸関節の特徴
動作開始に痛みを訴えやすい、体位変換時に痛みが出やすく、朝方の痛みを訴える人も少なくないことから本症例と一致しています。
次に仙腸関節障害の発生機序として
仙腸関節に微小なずれが生じて機能障害がおこるとその周囲組織や後方の靭帯に過緊張が発生する
周囲組織として圧痛があった梨状筋があげられ、梨状筋の反射性攣縮が生じ、梨状筋が坐骨神経を圧迫し下肢の疼痛が出現したと考える。
林らにより仙腸関節が梨状筋症候群発生のkeypointである可能性が示唆された。
という報告がありこのようなメカニズムが起きているのではないかと考えました。
文献
仙腸関節の特徴
動作開始に痛みを訴えやすい、体位変換時に痛みが出やすく、朝方の痛みを訴える人も少なくない
仙腸関節の痛み 診断のつかない腰痛 村上栄一
仙腸関節障害の発生機序
仙腸関節に微小なずれが生じて機能障害がおこるとその周囲組織や後方の靭帯に過緊張が発生する
仙腸関節の痛み 診断のつかない腰痛 村上栄一
林らにより仙腸関節が梨状筋症候群発生のkeypointである可能性が示唆された。という報告あり
股関節障害を基盤として発症したと考えられた梨状筋症候群の3例 愛知県理学療法士会誌 第17巻 第2号 2005年6月
疼痛が消失した理由
疼痛の消失に至った考察について説明します。
根本の原因として骨盤のアライメント異常があり、そこに対しアライメントの修正のリハビリを実施した結果、仙腸関節の微小なずれを抑制でき疼痛が消失したと考えます。
まとめ
•腸腰筋の短縮は腰椎や骨盤にストレスを与え、さらに梨状筋への筋緊張の増大から坐骨神経痛を生き起こす可能性があることが示唆される。
•骨盤後傾運動や腸腰筋のリラクゼーションは背臥位において骨盤に対する機械的ストレスの低下に有効性が示唆される。
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